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■大宇宙飛行シュートレポート Update 2003,09/17


第二回 フットボール道場 at TIROS
  湯浅遊走流 蹴球術奥義皆伝 其の壱「光臨! ユーロ'72西ドイツ代表」

レポート

 去る八月八日の金曜日の夜、東京大門のフットボール・カフェバー「TIROS」にて、第二回フットボール道場が開催された。このトークイベント、きっかけは「もっと昔のサッカーの戦術や歴史について、いろいろと話したり、知らない若い人に理解してもらおう」と考え、長く続くサッカーの歴史、つまりはフットボールの歴史を共有する事で世代を超えた交流が出来るようになれば…などと一応の構想はあったりしたが、要は「フットボールのバカ話」。フットボールを話のタネに楽しく過ごそうというのが本来の目的だったりして。もちろん、楽しいだけでは酒場の無駄話と変わりない。そこでフットボールの識者を迎えて、いろいろと薀蓄を聞かせてもらい、今後のバカ話に広がりを…もとい、フットボールについて知識や見識を深めよう、という試みなのであった。
 ということで、今回はフットボール・コーチであり、またフットボールについて多くの書籍を執筆されている湯浅健二氏を迎え、そのフットボール哲学と湯浅氏がこれまで見つめてきたドイツ・フットボールを主題に、大いにフットボールを語ってもらおう、というのが、今回のフットボール道場の趣旨である。ちなみに妙に格式ばったイベントのテーマタイトルだが「道場」の名前ということでフットボールの技術に流派を導入しようという新しい試み…え? 実はプロデューサーの趣味!? なお、以降の文章では「サッカー」と呼ばず「フットボール」で通させていただく。



 今年の夏の天気は冷夏とのことで、フットボール道場を開催したこの日の天気も、台風が近づき朝から小雨が降ったりやんだりと、ぐずついた天気。最初、雨で出足が止まるかと危ぶんでいたのもつかの間、そんな小寒い気候の中でも、参加者が続々と集まってくる。イベント開始には、ほぼ満席に近い状態。そして湯浅氏がいよいよ登場、フットボール道場のキックオフと相成った。
 今回はゲストの湯浅氏のほかに、オールドフットボールファンである小出正三氏に湯浅氏の話の山椒役として参加いただいた。ただ、この日は湯浅氏の早い話の展開に話題の移り変わりにあまり突っ込みどころがなく、手持ち無沙汰のような感じになってしまったが…。
  まず「お互いがフットボールを勉強をする場として、このトークイベントを楽しみたい」と湯浅氏の挨拶に続き、出だしから一気呵成に湯浅節が炸裂。まずは、西ドイツ代表(当時)の話で「72年が最も素晴らしいチームなんだけど、ドイツへ(コーチ留学に)行ったのは74年なんで、リアルタイムには見た事がない」…て、いきなりの発言。しかし「70年代を体感している」という言葉通りに、当時のドイツ・フットボールの戦術から考え方、選手やフットボール協会の意識までもが実に事細やかに解説され、参加者もとても楽しく興味を持って耳を傾けていた。
「72年のドイツと76年のドイツはフットボールの質やレベルが違う」
「72年のチームはシステムでの役割やプレースタイルのバランスが素晴らしい」
「76年のワールドカップ大会は、リベロを生み出した大会」
「ディフェンスのポジションにいたベッケンバウアーが前線に上がることで彼がリベロのポジションを確立し活躍した」 「74年はベッケンバウアーのチームになっていて、ネッツァーの入るすき(ポジショニング)がなくなっていた」 「現在進めている人材育成で今のドイツにも良い選手が育ちつつあり、2010年には美しく強いチームになっているのではないか。」 など、当日配布された70年頃当時のメンバーの記録の書類を見ながらドイツ・フットボールについて、あちこちに話題が飛びつつ(まさにトークのフリーランニング!)語られる。そして話は、ドイツ・フットボールの話から監督論へ移行していったが、ここでも湯浅氏の合理的で深い見識の意見が出され、参加者を大いに啓発したようだ。



  監督論が出たところでいったん休憩に入り15分ほどのハーフタイム。そして後半は、湯浅氏の話を中心に、参加者が質問や意見を出していくディスカッション形式で進められた。ここでは湯浅氏のドイツフットボールの話だけでなく、監督論やチーム論、フットボール哲学などが全般的に語られ、さらに充実した内容となった。70年代のドイツ代表チームから近いところでは、このトークイベントの直前に行われたレアル・マドリードとFC東京の試合など、具体的な例としてチームや選手を挙げ、それを肴に試合の印象やフットボール観を互いに語り合う、…ってほどでもなく、参加者の質問に答える形で、湯浅氏氏独特のフットボール理論が展開された。ここでの話の主だったところを挙げれば、
「(参加者からのレアルでのベッカムの状態の質問を受けて)ベッカムは前半は上手くかみ合っていなかったが、後半はボールが回り始めて良かったのではないか。ただジダンが入ってきていたらどうかは、まだ判らない」
「全速でどれだけ長く走れるか、回復をどれだけ早く出来るか、が良い選手の鍵」
「74年のオランダ代表の動きに挙げられるように、ディフェンスの動きの速さが、オフェンスの動きを決める」
…日本やドイツのフットボール協会の話も出て、その中で触れる程度だったがそれに絡んだ組織論の話も上がるなど、…いやホントに面白い話ばかりだった。
 最後に質疑応答を行い、非常に濃密な内容の時間を過ごしたのだった。特に選手のパーソナルな部分(性格)が監督と合わないときはどうしたらよいか、という質問については「性格が合わないのではなく、監督が提示する戦術の理解度が低い、と考えるべき」という回答は、非常に意味深く、湯浅氏の合理的な考え方を一端を表しているといえる。



  トークイベント終了後は自由参加での懇親会を開き、お酒やソフトドリンクを飲み食事をしながら、ドイツ・フットボールの映像を観戦、参加者はフットボールの話に花を咲かせていた(主旨からすればこっちがメーンイベントだったりして)湯浅氏も飛び入りで参加し、ときおり試合を解説。懇親会も大いに盛り上がった一夜であった。



平成15年9月7日

記: 鳥海

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